記事の通り、国家公務員の育児休業取得は増加しているようです。
しかし、一般企業では昨年の取得率は6.16%にとどまっており、2020年に13%という政府目標にはまだ届かない状況です。
そういった状況を踏まえて、男性の育児休業取得を義務化する法整備も検討され始めており、今後男性の育児休業取得の増加が予想されます。
妊娠から育児休業後の復職までの手続上の実務は、適用される法律が多岐にわたるため負担も大きいです。
そのため、クライアントからも「抜け落ちがないか心配」というご相談もよく受けます。
そこで今回は、妊娠期から産前産後休業、出産・育児休業を経て復職に至るまでの事務上必要な実務について紹介いたします。
まず、妊娠期から産前休業期間についてです。
社員から妊娠の報告があった場合以下の確認が必要です。
体調の確認をした上で、業務の見直しや転換の有無を話し合い、妊娠から育児にかかわる会社の制度、社会保険や雇用保険の制度や手続のスケジュールなどを合わせて説明しておきましょう。
体調に関しては悪阻や切迫早産等が傷病手当金の支給対象に、帝王切開は限度額適用認定証の利用が可能となりますので会社や医師と相談しながら必要な場合は申請していきます。
出産予定日がわかると産前産後休業期間や育休取得予定を決め、復帰後の就業イメージや育児支援体制を話し合っておくと休業中や復帰後の業務へのフォローや人員配置への対応がしやすくなるでしょう。
次に出産後から産後休業期間についてです。
子どもが生まれましたら、検診等で健康保険者証が必要となる機会が多いため、すみやかに扶養者にするための手続きを行います。
そして以下の手続きも行います。
:産前産後休業期間の社会保険料を免除する申出書
「健康保険出産手当金」
:産前産後休業期間で労務に服さなかった場合に
標準報酬月額の2/3に相当する額が支給される
「健康保険出産育児一時金」
:出産したことに対する一時金で42万円(40.4万円)が支給される
産後はどうしてもバタついてしまうため、産前にあらかじめ必要書類について説明しておきスヌーズに進められるように準備しておくことをおすすめします。
次に育児休業時についてです。
社員から育休取得の申出を受けたら育休時の賃金や待遇を十分に説明しておくことで復帰後のトラブル防止にもなります。
育休期間も産前産後と同様に社会保険料が免除になります。
また、育児休業開始日から一歳の前日までの期間に「雇用保険育児休業給付金」が支給されます。
通常は一歳の前日までですが、保育所に入所できない場合や配偶者の死亡・負傷・疾病などの場合は、一歳半、二歳までの延長が可能となります。
最後に復職時から復職後についてで、復職前に以下の確認が必要となります。
・保育所の入所状況と送迎時間・勤務時間の兼ね合い
・短時間勤務や残業制限、育児制度利用の有無
・その他配慮が必要な事項があるか
そして主に3つの手続きを行います。
:社会保険料免除を終了する
「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」
:給与が下がっても子どもが三歳になるまでは
下がる前の給与で年金を計算してくれる
「健康保険厚生年金保険被保険者育児休業等終了時報酬月額変更届」
:育児休業から復帰後、時短勤務などで給与が下がった場合に保険料を見直す手続
それぞれの家庭や会社の状況にあった育児休業制度の利用のためには、会社と本人がしっかり話し合うことが大切になります。
育児休業取得の増加が予想される中、法改正も多いため、今一度、会社の産休・育休に関する規則の見直しをしてはいかがでしょうか。
<平松 萌果>