2024年5月12日の日本経済新聞の朝刊に
という記事が掲載されました。
2025 年の通常国会に、次期年金制度改正の法案が提出されることが見込まれています。
その中で、老齢年金をもらいながら働く会社員の年金額を減らすルールの見直しが論点の一つになっています。
60歳以上の人が年金を受け取りながら会社員として働く場合、年金と賃金の合計が月50万円を超えると、年金が一部カットされる「在職老齢年金」の支給停止の制度があります。
年金は、退職し、稼ぐ力が失われた人に対する生活保障という考え方があるためです。
若年人口の減少で人手不足が深刻化し、高齢者就労への期待が年々高まる中、この在職老齢年金制度を巡っては「シニアの就労意欲をそぎかねない」との指摘も根強く、見直しが検討課題となっています。
実は前回の20年改正の議論でも在職老齢年金の見直しは大きな争点となっていました。
このときは、60~64歳については年金減額が始まる基準額(月28万円)を65歳以上の基準額(当時で月47万円)と同額に引き上げるものの、65歳以上の基準額は据え置く形になりました。
当時の分析では、64歳までは制度が就業率を押し下げていることが確認できましたが、65~69歳では就業率への影響が認められなかったこと。
また、働く高齢者への年金支給を増やせば厚生年金財政が悪化し、将来の給付水準を低下させる検証結果が出たことが制度継続の判断根拠でした。
5年後の現在、高齢者就業の状況は変化している可能性があります。
5年前は65歳以上で働く加入者は役員が主体でしたが、その後、企業が定年を廃止・延長する動きもあり、一般従業員の就業も増えているはずです。
働く高齢者が増えれば、所得増で今より高額の医療・介護保険料を負担する人が増え、社会保障の支え手が厚くなり、現役世代の負担軽減につながる効果も期待できます。
様々な角度から影響を分析し、最適な制度の姿を探る必要がありそうです。