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就労調整「週19時間」「130万円の壁」と時給の分岐点

2025年9月20日の日本経済新聞に

パート勤務「週19時間」の損得 就労調整、時給1320円が分岐点

という記事が掲載されました。

現在の賃上げ率はバブル期以来、三十数年ぶりの水準に達しており、2024年は5.10%、2025年は5.25%でした。

このような歴史的な賃上げでも物価の伸びには追いつかず、給料は目減りしていることから今後も賃金上昇が続いていくことが見込まれます。

では、賃上げが続くとどのような影響があるか、短時間労働者の方に着目して、お伝えしようと思います。

従業員(社会保険の一般被保険者)数が51人以上の企業等では、以下の条件に当てはまる短時間労働者は社会保険に加入しなければなりません。

(1)週の所定労働時間が20時間以上であること
(2)所定内賃金が月額8.8万円以上であること
(3)学生でないこと

全国の最低賃金がすべて時給1016円を上回ると、週20時間働けば、月収は8.8万円以上になります。

2025年度の各地域の最低賃金は時給1016円を上回る見通しで、来年3月末までにすべての都道府県が新たな最低賃金を発効します。その結果、社会保険加入の賃金要件は事実上撤廃となるでしょう。

主な要件として残る勤務時間の「週20時間」が新たな壁として浮上します。

これまで、年収130万円未満で配偶者の扶養内で働き、社会保険料の負担を避けるなら、働く時間を減らすか、規模の小さい会社で働く方法がありました。

従業員(社会保険の一般被保険者)数が51人以上の会社なら、週の勤務時間を20時間未満に減らせば、社会保険への加入は避けられます。

20時間以上働くなら、50人以下の会社に移れば、勤務時間が週30時間未満などフルタイム勤務の4分の3未満までは、社会保険への加入は避けられます。

ところが賃金水準が上がると、勤務時間を減らしたり、規模の小さい会社に移ったりすることにより、かえって不利になることがあります。

例えば、51人以上の会社で社会保険の加入を避けるため、週20時間未満に勤務時間を抑えようとする場合です。

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週19時間に就労調整した場合を考えてみましょう。

時給が1320円に上がると週19時間勤務でも、「130万円の壁」に当たり扶養から外れることになります。ただし、勤務時間が週20時間未満だと社会保険には加入できません。

このため、自分で国民健康保険と国民年金に加入して保険料を払うことになりますが、保険料は32万円前後であり、週20時間で社会保険に入るよりも負担が大きく、手取りが減ってしまいます。

時給によっては、就労調整を行わず、社会保険に加入するほうが、手取りが多く、かつ、将来の年金は増えることになりメリットが大きいと言えるでしょう。

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51人未満の会社だとどうでしょうか。

例えば、子どもがいるため週20時間は働けても、30時間勤務は難しい場合、年収130万円を超え、扶養から外れることになっても、社会保険に加入できません。

前述のケースと同様に、国民健康保険と国民年金に加入して保険料を払うことになり、手取りが減ってしまいます。

週20時間でも社会保険に加入できる規模の会社を選びたいと思う方もいるでしょう。

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東京都や神奈川県の25年度の最低賃金は60円以上上がり1200円台に突入しています。

130万円の壁はぐっと近づいており、手取りを減らさない、損をしないための分岐点を理解する必要がありますね。

<白丸 眞委>