2019年8月31日の日本経済新聞の朝刊記事に
という記事が掲載されました。
ソーシャルファームとは、直訳すれば、「社会的なつながりにおける集団」となります。
健常者である私たちは、学校・会社・地域活動など様々な「社会的なつながり」を有していますが、身体に障がいを抱えている人たちは、健常者が思う以上に、「社会参画」は容易ではなく、支援の輪もまだまだ十分な環境とは言えない状況です。
障がいを抱えた人たちが毎日不安なく生活を送るためには、「所得が得られ、安心して働ける場所」の提供が必要ではないでしょうか。
そういった中、ソーシャルファームは、障害のある人あるいは労働市場で不利な立場にある人々のために、仕事を生み出し、また支援付きの雇用の機会を提供することに焦点をおいたビジネスとなって、一部の公的な支援を受けながら、基本的には民間で営むものとなります。
ソーシャルファームの始まりは、1970年ごろのイタリアの精神病院だと言われています。入院治療が必要でなくなった人が地域に住み、仕事に就こうとしたが、偏見差別意識から雇用する企業が現れなかったため、病院職員と患者が一緒になって仕事をする会社を自ら作っていったのが始まりです。
その後、1980年代にドイツ、オランダ、イギリスなどヨーロッパ各地に広がりました。
日本では、ソーシャルファームに関して、法的な枠組みや定義はまだ存在していませんが、障害福祉サービス事業所や、特例子会社、障害のある人を多く雇用している企業などが近い存在ではないでしょうか。
記事にあるように今回、都が新たに条例を制定し、認証制度を創設した背景には、通常の労働市場ではなかなか仕事が見つけられない人が増加していることが挙げられます。
具体的には、障がいを抱えている人たちや、高齢者、刑務所から出所した人、母子家庭の人などです。
厚労省は2018年時点で、障がいを抱えている人たちの人口は936万6千人と、前回(2013年)の推計より、約149万人増加し、日本の全人口に占める割合も、約6.2%から、約7.4%増えていると公表しています。
また、総務省は、2018年10月時点で、65歳以上の人口は3557万人と、前年より44万人増加しており、1950年以降一貫して増加していると公表しています。
こうした障がいを抱えている人たちの人口の割合の増加と、生産年齢人口の減少による労働力不足の対応策として、こうしたビジネス形態が存在していることも知っておきたいですね。
〈藤川 楓〉