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政府が実現を目指す「全世代型社会保障」

2019年9月12日の日本経済新聞の朝刊記事に

「全世代型」実現へ側近配置 ~社会保障で新内閣~

という記事が掲載されました。

政府が実現を目指す「全世代型社会保障」とは、「子供から現役世代、お年寄りまでの全ての世代が安心できる社会保障制度」のことで、高齢者向けの給付が中心となっている社会保障制度を全ての世代にそれぞれの用途で適用できるようにと様々な政策が検討されています。

現行の社会保障制度を全世代型に変えていくとなると、現役・若年者向けの給付を増やすことになるため、高齢者向けの給付の見直しや新たな財源の確保が必要になります。

その実現のための政策として挙げられるのが、消費税の増税や年金受給開始年齢の引き上げ、パート・アルバイトなどの短時間労働者の厚生年金適用拡大などです。

ここでは、短時間労働者の厚生年金適用拡大を取り上げます。
まず、現行の短時間労働者の社会保険加入要件は次のように定められています。

勤務時間・勤務日数が常時雇用者の4分の3未満で、以下の①~⑤を満たすこと
①週の所定労働時間が20時間以上あること
②雇用期間が1年以上見込まれること
③賃金の月額が8.8万円以上であること
④学生でないこと
⑤被保険者数が常時501人以上の企業に勤めていること(労使間での合意があれば500人以下の企業でも加入できる)

記事によると、現在政府は厚生年金加入において、この⑤の要件を撤廃する方向で検討を進めています。

では、この⑤の要件が撤廃されることによってどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

まず、労働者側には将来もらえる年金額や障害年金、遺族年金の受給額が増加することや
、会社からも保険料の半分を支払ってもらえるなどのメリットがあり、デメリットとしては厚生年金の保険料が控除されるためその分手取りが少なくなるといったものが挙げられます。

一方、企業側にメリットはなく、従業員の保険料の半額を企業側が支払う仕組みのため短時間労働者を多く雇っている中小零細企業ほど負担が大きくなるといったデメリットがあります。

この他にも、平成31年4月から実施されている「有給取得の義務化」や、「最低賃金の引き上げ」が現在進行形で推し進められているため、企業側の負担はこれからますます大きくなると考えられます。

そのため、常に政府の動向に目を見張り、新たな施策に対応できるように労働者ひとりひとりの生産性の向上や賃金の見直しを行うなどして備えていくことが大切です。

<緒方 舞>