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同一労働同一賃金について

2020年10月14日の日本経済新聞に

格差是正~競争力に~

という記事が掲載されました。

先日まで正規社員と非正規社員の待遇格差についての裁判が行われていましたが、2020年10月13日に非正規従業員に賞与や退職金が支払われないことの是非が争われた訴訟の上告審判において、賞与や退職金の不支給は「不合理とは言えない」との判断を示し、原告の主張を退けました。

しかし、待遇格差の内容次第では「不合理とされることがあり得る」と述べています。

今回の裁判において、正規社員と非正社員の仕事内容の差が明確化しました。

裁判所は正規従業員と非正規従業員では仕事内容に明確な違いがあるため、二者間の待遇の差は許容されるべきものでもあるとされています。

今回、最高裁は就業形態による正規社員と非正規社員の待遇格差を認めましたが、正社員の待遇を特権的に守る日本型雇用は限界が来ているようです。

長く日本では終身雇用の正社員が標準的な働き方でした。

職務内容は規定されず、配置転換や転勤を受け入れる代わりに、定年まで雇用が保証され賞与や退職金も支給されてきました。

一方、非正規社員は正社員を守るための壁となり、不況期には雇用調整の対象となってきました。

賃金は「身分」で決まり、仕事の中身との結びつきはかなり弱いものでした。

しかしこの仕組みは今後無くなっていきます。

2020年4月1日より全国の大企業で、中小企業では2021年4月1日より「同一労働・同一賃金」が適用されました(適用されます)。

同一労働・同一賃金は企業側・労働者側にメリットやデメリットがありますが、今回は「同一労働・同一賃金」の3つの変更点について触れていきたいと思います。

①不合理な待遇差を解消するための規定を明確化する
今回の法改正によって「どのような待遇差が不合理にあたるのか」を明確に規定へ反映させることが求められます。また、待遇ごとに判断することを明確化するため、企業はガイドラインの策定・尊守も求められるようになります。
②労働者の待遇に関する説明義務の強化
これまでのパート労働者に対しては説明責任がありましたが、有機雇用者に対しては説明責任がありませんでした。主な説明タイミングは雇入れ時であり、賃金や福利厚生、正社員転換などの説明をする義務を創設することが事業主に求められます。
③行政による履行確保および裁判外紛争解決手続きの整備
これは事業者と労働者との間の紛争を裁判を行わず解決する手続きを整備する

というものです。

上記に述べた既存規定の変更を守らずとも特別な罰則は設置されない予定です。

しかし、労働者側からの権利を主張しやすくなることで、体制を整えられていない企業はトラブルが起きやすくなってしまう可能性もあるため、日ごろからしっかりと業務内容の規制には気を配っておくことが必要だと思われます。

同一労働同一賃金への対応は一朝一夕でできるものではないため、社内の雇用制度の確認、社員理解、制度設計、周知といったプロセスを余裕をもって行う、速め速めの行動が重要になってきますね。

<野村 貴司>