11月18日の日経記事の朝刊に
という記事が掲載されました。
厚生労働省は17日、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の見直し案の骨格を示しました。所得比例部分の負担を増やし、加入者の約4割を対象に保険料を上げます。
能力に応じた負担を強め、現役世代の負担を抑えます。
ただ、給付抑制や効率化の議論は低調で、医療費急増への備えは半ばです。
同日の社会保険審議会(厚労省の諮問機関)の部分に示した、後期高齢者医療制度は窓口負担を除いた約17兆円の医療費のうち、保険料でおよそ1割、現役世代の拠出金で4割、残りの5割を公費で賄っています。
現役世代の拠出金負担を抑えるために2024年度から年間上限額を80万円とし、高所得者に一定の負担増を求めます。
加入者の約1割が対象となり、上限の引き上げ幅はこれまで大きくても5万円で、今回の14万円は過去最大です。
年収153万円超の人が収入に応じて負担する「所得割」部分も年収に応じて増え、後期高齢者の約4割が該当します。
現役世代の負担ばかり膨らむ不公平な現状を見直す狙いがあります。
22年度からは団塊の世代が後期高齢者入りし、医療費の伸びは加速が見込まれます。
後期高齢者医療制度が発足した08年度と22年度を比べると、後期高齢者1人当たりの保険料は2割増なのに、現役世代の1人当たり拠出金は7割増えました。
今後は介護保険を参考に負担の増え方に差が出ない仕組みとします。
厚労省が一定の仮定を置いた試算では後期高齢者の保険料負担は820億円増えます。
1人当たり平均年4千円です。
現役世代の負担はその分減り、健康保険組合で1人当たり1000円減、中小企業の従業員らが入る全国健康保険協会(協会けんぽ)は800円減となります。
実際の影響額は試算から変わる可能性があります。
一方、現役世代も所得に応じた負担を強めます。65歳~74歳の前期高齢者の医療費を賄うための支援額の額にメリハリを付け、報酬の高い健保組合などは負担が増え、協会けんぽは負担が減ります。
今後の焦点は具体的な負担増の規模や範囲となります。
政府・与党内での調整を経て年末までに改革案をまとめ、来年の通常国会に関連法改正案の提出を目指しています。
一連の見直しの結果、現役世代の負担がどの程度抑えられるのかもポイントです。
75歳以上の1人当たり医療費が74歳以下の約4倍に及びます。政府の予測では、医療費は自己負担を除いた給付費ベースで40年度に60兆円台後半まで増えます。
医療の効率化や給付の見直しの議論は待ったなしなのに、新型コロナウイルス禍への対応に追われ、本格的な議論に至っていません。税財源を含めた一体的な改革を進めなければ制度の持続性はおぼつかないのが現状です。
政府が協議している医療保険制度改革により、現役世代の負担抑制にはなりますが、医療費負担総額は変わりません。
医療の効率化や給付の見直しの議論を進め、負担総額を削減する取り組みが必要ではないでしょうか。
<鈴木 翔大>