2022年12月10日の日本経済新聞の朝刊に
厚生労働省は9日、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の見直しによる影響額の試算を示しました。
保険料の所得比例部分を引き上げることで、後期高齢者の平均で支払額が年五千円超増えます。
後期高齢者の医療費を支える現役世代の支援金額は年々拡大しており、負担軽減に充てられます。
後期高齢者医療制度は窓口負担を除いた約17兆円の医療費のうち、保険料でおよそ1割、現役世代の拠出金で4割、残りの5割を公費でまかなっています。
制度改革の柱は2つあり、1つが後期高齢者の保険料の引き上げです。
2024年度から、年収153万円超えの人が収入に応じて納める「所得割」部分を増やし、後期高齢者の約4割が対象となります。年間上限額も14万円上げて80万円とし、高齢者に一定の負担増を求めます。
保険料の引き上げは、現役世代に偏る負担を減らす狙いがあります。
後期高齢者医療制度が始まった08年度と22年度を比べると、後期高齢者1人当たりの保険料が2割増えたのに対して現役世代の1人当たり拠出金は7割増加しました。
今後は介護保険を参考に支出の増え方が同水準になる仕組みにするそうです。
出産育児一時金の拡充に向けても後期高齢者に財源を出してもらうことになっています。
現在は年3千億円規模の支出の大半を現役世代の保険料で賄っています。
24年度からは高齢者も7%を払うことになりました。
後期高齢者の負担が一気に重くなるのを避けるため、激変緩和措置も検討されています。
全体の制度改革を通じた後期高齢者の負担増額は一千億円を超える見込みで、現役世代の拠出金はそれだけ減ることになります。
厚労省の試算では一連の見直しで後期高齢者の保険料額は年平均で5300円増えます。
年収1100万円の人は年13万円、400万円でそれぞれ増加し、年収80万円の場合は変わりません。
政府は出産育児一時金を現在の42万円から23年度に50万円程度に引き上げる方向です。
保険料の試算は一時金を47万円に上げる仮定のため、実際の金額は想定を小幅に上回る可能性があります。
医療保険制度改革の最大の目的は現役世代の負担を軽くし、高齢者世代との差を縮めることです。
厚労省は65歳~74歳の前期高齢者の医療費について、所得水準の高い現役世代からの拠出を増やす方針です。
大企業など所得水準の高い加入者が多い健保組合は450億~890億円ほど拠出が増える見込みです。
後期高齢者医療制度の見直しによる軽減額を上回っています。
このため厚労省は健保組合への財政支援を大幅に拡充します。
前期高齢者医療費の拠出の見直しで国費が1千億円規模で浮くため財源に充てられます。
現役世代の支払いが全体として増えないようにするためです。
現役世代と高齢者世代の負担の差を縮めつつ、限られた財源を適切に活用する必要があるのではないでしょうか。
<鈴木 翔大>