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「年収の壁」の対応策について

2023年9月26日の日本経済新聞の朝刊に

年収の壁、抜本対策先送り ~企業助成1人50万円~

という記事が掲載されました。

政府は、年収が一定額に達すると社会保険料が発生して手取りが減る「年収の壁」の対応策をまとめました。

賃上げなどで労働者の収入が減らないよう企業に1人あたり最大50万円を助成するのが柱となります。

今回の対策は3年程度の時限措置で、2025年に予定する制度改正で抜本改革に踏み切れるかが問われています。

足元で賃上げが進むなか、年収の壁に引っかからないよう、就業時間を減らすパートや派遣社員が増えています。

新たな対策で深刻な人手不足に歯止めをかけるとともに、優遇策を通じて企業にさらなる賃上げを促す狙いです。

壁には大きく年収に応じて「103万円」「106万円」「130万円」の3つがあり、額ごとに対策を講じます。

岸田文雄首相は25日、「まずは106万円の壁を乗り越えるための支援策を強力に講じていく」と強調しました。週内に正式決定の予定です。

従業員101人以上の企業に勤める労働者は、月額賃金が8.8万円以上などの要件を満たすと配偶者の扶養を外れてしまいます。

壁を越えると約15万円の負担が発生するため、厚生労働省は年収換算で約106万円の壁の付近で就業時間を調整して手取りが減らないようにする人が最大60万人いると試算しています。

新たな対応策では手取りの減少を補うため、従業員が負担すべき保険料の増加分を手当として支給したり、基本給の増額と労働時間の延長に取り組んだりする企業を助成します。

例えば、賃金の15%以上分を従業員に追加で支給すれば1~2年目でそれぞれ20万円、3年目にも一定の要件を満たせば10万円を助成する。

扶養から外れた労働者の社会保険料分を、手当の支払いで支援した企業も支援します。

保険料の負担分を実質的に肩代わりする今回の助成策は、自ら保険料を納める他の労働者との公平性が保てない恐れがあります。

そもそも106万円の壁は負担が生じる代わりに年金額が増えたり、ケガや出産の際の給付が充実したりするなど、本来は「壁」と呼べないとの声も多いです。

とはいえ、年収が106万円に満たない人にも等しく保険料負担を求めるとすれば大きな反発は避けられません。

今後3年の間に国民全員により公平で納得感のある形で、持続可能な抜本改革を実現させる必要があります。

生きていくうえで欠かすことのできない社会保険。
どこで折り合いをつけるか難しいところですが、今後の動向に注目していきたい話題です。

<松尾 良徳>