2024年6月24日の日本経済新聞の夕刊に
退職者カムバック、自治体も 都庁「アルムナイ」募集開始 公務員離れに危機感く~
という記事が掲載されました。
最近、中途退職した元職員を再度雇用する「アルムナイ採用」が自治体で増えています。
「アルムナイ」とは、人事分野では中途退職者を指します。売り手市場で公務員人気に陰りがみえるなか、中途退職者を即戦力として見直す動きが自治体にも広がっているようです。
2024年度から導入を始めた東京都は、1年以上の勤務経験を応募条件とし、選考は新卒採用や中途採用で課す筆記試験を免除し書類選考と面接のみとしています。いずれも育児や介護を理由とした退職者に限定するのではなく転職者を対象に含め、年間を通じて幅広い職種で採用をしており、都人事課は「有為な人材を厳選して採用したい」と話しています。
これまでも中途退職者を再雇用する制度を設ける自治体はありましたが、出産や育児、介護などで職場を離れた女性の復職支援という意味合いが強かったように思います。しかし今回転職者に門戸を広げたことで、応募が増えた自治体もあり、確かに成果が見られています。
そもそもアルムナイ採用の導入が広がり始めた背景として、昨今の地方公務員のなり手不足への危機感があげられます。
安定した就職先として人気の高い公務員も、採用試験の受験者が10年前に比べて2割減少している一方で転職など定年前の中途退職者は5年前から4割増加しており、定員割れとなっている自治体も少なくない現状にあります。
地方公務員のアルムナイ採用は国も注目しています。総務省は2023年12月、職員の育成や採用の方針を示す自治体向けガイドラインを改正し、新卒者に限らず多様な人材の採用が重要だとして再採用制度の創設を盛り込みました。
このような「出戻り制度」では、過去の働きぶりが明らかであり、また業務や経営方針をすでに理解しているため人材の質が保証されている、応募者側のアンマッチリスクも低く活躍しやすいというメリットが考えられます。
一方で、このような出戻り社員を受け入れることに起因するデメリットにも注意が必要だといえます。社内に「退職者=裏切り者」ととらえる風土があったり、中途採用に対する受け入れ体制が整っておらず低評価につながったりすると、せっかくにアルムナイ採用を導入する意味がないと思うので、社員の理解を得ることも大切です。
導入の際はデメリットをきちんと社内周知、克服したうえでうまく活用していければいい制度だなと思います。
<福万 ひな>