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公的年金財政検証と社会保険加入要件の変化について

2024年7月3日の日本経済新聞の記事に

年金下支え、パート要件緩和で狙う 個人の備えも促す

という記事が掲載されました。

厚生労働省が今月3日に発表した公的年金の財政検証結果は5年前に比べて改善傾向がみられたものの、給付水中の低下が当面続くことも示しました。

今回の財政検証では、5つの改革案を実施した場合の効果を試算していますが、そのうちの1つが厚生年金に加入する労働者を増やすという案です。

現在の社会保険加入要件は、週所定労働時間が20時間以上賃金8.8万以上などに加えて企業規模の要件があり、今年10月からは、従業員数が51人~100人の企業もパート・アルバイトを社会保険に加入させることが義務付けられます。

政府は、この企業規模の要件について今後は撤廃する方針を固めています。

現在パートとして働く人々が厚生年金に加入するための要件を緩和し、「支え手」を広げることによる制度の安定化を図ることが目的です。

この検証結果によると、企業規模の要件を廃止し、かつ5人以上の全業種の個人事業所に適用した場合、新たに90万人もの労働者が厚生年金の加入対象になるとされます。

そこからさらに賃金や労働時間に関する要件を外して週10時間以上働く全員を対象にすると、新たに860万人が加入することになるでしょう。

しかし、改革案にはもちろん反発もあります。基礎年金の水準を高めると財源の半分を占める国庫負担が増し、財源確保が必要となるためです。

国庫負担とは、各種特別会計・地方公共団体・公法人等の事業費や事務費について、国が一般会計の支出としてその全部または一部を負担することをいい、改革案の実現には政治的ハードルが高くなることが予測されます。

また、労働者の視点からしても、パートの手取りが減ってしまうのは大きな問題となるでしょう。物価の上昇が深刻化する昨今、いくら将来の年金が増えると言われても、いま収入が欲しいから働いているのだという人は少なくありません。

特に労働時間要件を中途半端に引き下げると、そこを基準とする就業調整が発生して人手不足に拍車がかかることにも繋がります。

今回の検証では、このほかにも「在職老齢年金制度」の撤廃案「第3号被保険者制度」の廃止等も試算されました。

企業だけでなく労働者にもこれらの変化は大きな影響を与えるでしょう。社会保険の手続きやご相談を受ける身として、今後もしっかりと追っていきたいと思います。

<吉住 姫乃>