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パートの社保加入要件拡大について

2024年10月1日の日本経済新聞に

厚生年金、パートに手厚く きょうから従業員51人以上の企業も対象 経営者6割、資金繰り懸念

という記事が掲載されました。

10月1日から、パート労働者の厚生年金の加入対象が拡大となり、これまでは従業員101人以上の企業に限られていたところが、51人以上の企業も適用されるようになりました。

これにより、新たに20万人程度の労働者が厚生年金の加入対象となりました。

労働時間を伸ばすなどの働き方を見直す従業員がいる一方で、経営者の間には負担増の懸念もあります。

10月から厚生年金の加入対象となる人は、51人以上の企業で働くパート労働者であり、週所定労働時間が20時間以上、また月額賃金が8万8000円以上(年収換算で約106万円)などの要件があります。

厚生年金の加入対象になると社会保険料を払う必要がありますが、老後の年金の上乗せが期待でき、生活保障が手厚くなるというメリットがあります。

医療保険の枠組みで、現役時に傷病手当金などの手当てももらえるようになります。

一方、会社員の配偶者の場合、受け取る賃金が基準より少ないなどの要件に該当しなければ、自身では社会保険料を払わなくても、第3号被保険者として老後に国民年金(2024年度の満額は月額6万8000円)を受け取ることができます。

この要件は「年収の壁」と呼ばれ、パート労働者の就業抑制につながっていると指摘されてきました。

加入拡大により、社会保険分が給与から天引きされても、手取りが以前と同じ程度になるように労働時間を伸ばすことにしたパート労働者がいるのと同時に、年収の壁を超えないように労働時間を短くして社会保険の適用外にする動きもあります。

また、制度改正を見越して退職した従業員もおり、新たにパート労働者を採用するなどの対応に追われている企業も出てきています。

パート労働者が年収の壁の内側に留まろうと考える一方で、企業、特に中小企業は10月から順次行われる最低賃金の引き上げもあり即座に人件費を増やすことができません。

従業員が厚生年金に加入する際、企業も社会保険を負担しています。加入拡大と最低賃金の引上げに伴い、人件費の負担が増す企業は少なくはないでしょう。

政府は、今後、パート労働者について今回51人以上とした企業の規模要件を撤廃するという方針を示しています。これに伴い、新たに90万人が厚生年金の対象となると試算されています。

10月に入り、働き方の見直しをしている労働者の方が増えている印象です。今後も変わっていく社会保険の制度について、今後もしっかりと学んでいきたいと思います。

<吉住 姫乃>