2025年8月5日 の日本経済新聞に
という記事が掲載されました。
厚生労働省の中央最低賃金審議会は4日、44年ぶりに7回目の審議までもつれ込み、2025年度の最低賃金の目安を全国の加重平均で時給1118円にすることで決着しました。
現在の1055円から63円の引き上げとなり、過去最大の増加幅となります。
引き上げは23年連続となります。伸び率では6.0%でした。24年度に示した目安は5.0%で最低賃金を時給換算で示すようになった02年度以降で最大です。
政府が「2020年代に1500円」を実現するには、平均で年7.3%の引き上げが必要となります。6月に決めた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、最低賃金も含めた賃上げを「成長戦略の要」と位置づけています。
国が示す目安を上回って最低賃金を設定した都道府県を補助金や交付金で支援するとも明記しました。
具体的な引き上げの目安は、都道府県を経済状況によって分類したA・B・Cの3つのランクに分けて示されています。
東京や大阪など6都府県のAランクと、北海道、広島、福岡など28道府県のBランクは63円、秋田や沖縄などCランク13県は64円としました。下位ランクの地域の引き上げ額が上位ランクを上回るのは初めてとなります。
目安どおりの引き上げがされた場合、すべての都道府県で1000円を超えます。
今後、国の審議会が示した目安をふまえ、各都道府県で改めて審議会を開き、実際の引き上げ額を決めます。
物価高対策を考えれば引き上げ幅の拡大は当然といえますが、さまざまな懸念も示されています。
現在、最低賃金に近い時給で働く人は700万人ほどにのぼるとみられています。インフレや賃上げに応じた一定の引き上げは、働き手の暮らしの水準維持に欠かせません。
他方、経営体力と乖離した賃金を強いられれば、思うように人材の採用や雇用の維持ができず、地域経済がしぼむリスクがあります。
政府が過剰な引き上げ支援に傾けば、中小企業による自主的な生産性向上の意欲をそぐ側面もあります。また、所得税が課され始める「年収の壁」に短時間で到達するために、パートの「働き控え」が広がるかもしれません。
最低賃金法は違反企業が罰せられるなど厳しいルールです。そのため具体的な金額は国が一方的に提示するのではなく、経営者と労働者、および学識者の代表の3者が話し合って決めていかなければなりません。
物価高に負けない賃金の底上げを期待したいです。
<手島 裕子>