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年次有給休暇について

2019年10月30日の日本経済新聞の朝刊記事に

有給取得率、18年は52.4% 厚労省調べ

という記事が掲載されました。

今回は平成31年4月施行されている年5日の年次有給休暇取得義務とその対応について紹介します。

まずは、年次有給休暇について整理をします。

年休とは一定期間継続勤務した労働者に対して心身の疲労とゆとりある生活を保障するために付与される有給の休暇です。

年休には発生条件があり、

・6ヶ月以上の継続勤務
・全労働日数の出勤率が8割以上であること

以上の二つを満たすと年休が発生する基準日ごとにその権利が発生します。

継続勤務とは労働契約の存続期間を指します。

有期契約労働者であっても契約の更新により、実態から見て引き続き雇用契約が続いていれば継続勤務として扱うことができます。

原則、年休は労働者が請求する時期に与えなければならず(時季指定権)年休の取得を認めない日を設定することはできません。

しかしながら、「事業の正常な運営を妨げる場合」には使用者が他の時期にこれを与えることができます。(時季変更権)

事業の正常な運営を妨げる場合とは

・年末年始など業務が繁忙な時期である
・同一の時期に多数の労働者の時期指定が競合したために
全員に付与することが難しい場合
・当該労働者でなければ対応できない業務がある場合

などが考えられます。

単に繁忙の時期というだけでは時季変更権は認められません。

次に年5日の年休取得義務への対応についてです。

義務違反した場合、使用者に対して30万以下の罰金というように罰則につながるため、これまでよりタイムリー且つ確実な年休管理が求められます。

実務面での対応のポイントは以下の6つです。

① 対象者は年次有給休暇10日以上付与される労働者に限る
② 労働者ごとに年次有給休暇を付与した日(基準日)から一年以内に5日について使用者が取得時季を指定して与える
③ 年次有給休暇5日以上取得済みの労働者に対しては使用者による時季指定は不要
④ 労働者が自ら申し出て取得した日数や労使協定で取得時季を定めて与えた日数(計画的付与)については5日から控除できる
⑤ 使用者は時季指定に当たって、労働者の意見を聴取した上で尊重するよう努めなければいけない
⑥ 使用者は労働者ごとに年次有給休暇簿笑作成し、三年間保存しなければならない

現時点で労働者各自の年休消化率が低い企業は、計画年休などを活用してはいかがでしょうか。

計画年休制度(計画的付与)とは各労働者の年休のうち5日を超える部分について、あらかじめ日にちを決めて付与する制度です。

この方法であれば、個別の管理をせずとも一律に漏れなく5日消化できるようになるため手間が省けます。

また、業務への支障が少ない閑散期に計画付与することで業務への影響を少なくできる利点があります。

年休消化率が高い企業や規模が小さい企業は、個別の労働者に絞って年5日の消化になるよう時季指定していく方が柔軟な対応といえるでしょう。

企業の実情に合わせた管理方法を決めて政府目標である70%を達成できるようにしていきましょう。

<平松 萌果>