2020年9月7日の日本経済新聞の朝刊記事に
という記事が掲載されました。
コロナウイルスによる労災保険の申請は、5月の30件台から9月2日の時点で1000件を超え、このうち審査を終えた約500件について厚生労働省はすべて労災を認めたそうです。
労災保険は健康保険に比べ、補償が手厚いのが特徴です。
療養にかかる費用の自己負担はゼロ、休業中は休業補償給付として、賃金日額の60%、休業特別支給金として同20%の計80%が支払われます。
しかし、補償が手厚い一方、審査が厳格になっています。
労災として認定されるには、傷病が仕事で起きたことを示す「業務起因性」と、仕事中に発生したのかを問う「業務遂行性」の2つの要件が認められなければなりません。
具体的にどのくらい労災が認められているのかというと、令和元年における脳・心臓疾患の認定率で31.6%(厚生労働省ホームページより)です。やはり、労災保険の認定基準が厳しいことが分かります。
今回の新型コロナウイルスにおいて厚生労働省は1月中旬の国内初感染者確認を受け、2月3日には全国の労働局に「特定の業務には起因性がないとの予断を待たずに対応をすること」と通達をしました。
ただ、この時点では「感染経路が明確に特定されること」が条件だったため、一般の会社員が業務上感染を証明することは難しいとされていました。
しかし、4月28日の2本目の通達により、感染経路が特定されない場合でもリスクが相対的に大きい業務で、医学専門家の意見と労働基準監督署の調査で仕事による感染の可能性が高い場合、労災と認める新しい着眼点を示しました。
このことをきっかけに、一般の職業の感染者からは172件の申請が出て、審査を終えた70件すべてが労災と認定されました。
労働者として働く中で、労災保険の制度についてきちんと知り、いざというときに知識を備えておくことは大切なことかもしれません。
<藏永 彩絵>