2022年12月26日の日本経済新聞の朝刊に
厚生労働省はあらかじめ決めた時間を働いたとみなす「裁量労働制」の対象業務に銀行や証券会社のM&A(合併・買収)業務を追加します。これは、多様な働き方の実現に向け、時間にとらわれない働き方ができるように対象を拡充する目的があり、適切な運用には過重労働の防止策などの充実も求められます。
裁量労働制は弁護士やゲームソフトの創作など専門性が高い19業種が対象の「専門型」と事業の立案・調査など「企画型」の2種類があります。M&A業務は専門型として追加します。企業から「M&A分野は専門性が高い半面、繁閑の差が大きい」などと追加を求める声があり、経団連も対象拡大を要望していました。
専門型の対象業務は省令や告示で定め、現在19あります。M&Aを追加すれば2003年以来、約20年ぶりとなります。今後の流れとしては23年に政省令を改正し、24年に施行する見通しです。また、企業が一方的に適用を決めると過剰な業務責任を与えて過労を引き起こすとの懸念もあり、従来は企画型のみ必須だった本人同意を専門型でも義務化します。
厚労省による19年の調査では裁量労働制の適用者は1日の平均労働時間が9時間と非適用者より21分長かったそうですが、適用者は8割程度は「満足」「やや満足」と答え、私生活とのバランスが取りやすいと評価する声が目立ちました。
一方で、令和3年の厚労省の就労条件総合調査によると、「専門型業務裁量労働制」を採用している企業割合が2%、「企画業務型裁量労働制」については0.4%となっており、導入している企業はまだまだ少ない状況にあります。今回の対象業務の追加を受けて、少しでも多様な働き方に繋がり、採用する企業が増えると良いですね。
<藤下 雅基>