労働者が不正な行動をし、懲戒処分に該当する可能性がある場合、調査が必要になり、当該労働者に自宅待機を命じることが考えられます。
ここで問題なのが、自宅待機中の給与の取扱いです。
判例においても「このような場合の自宅謹慎はそれ自体として懲戒的性質を有するものではなく、当面の職場秩序維持の観点から取られる一種の職務命令と見るべきものであるから、使用者は当然にその間の賃金支払い義務を免れるものではない。
そして、使用者が右支払い義務を免れるためには、当該労働者を就労させないことにつき、不正行為の再発、証拠隠滅の恐れなどの緊急かつ合理的な理由が存するかまたはこれを実質的な出勤停止処分に添加させる懲戒規定上の根拠が存在することを要すると解すべきであり、単なる労使慣行あるいは組合との間の口頭了解の存在では足りないと解すべきである」
としています(日通名古屋製鉄作業事件 名古屋地裁 平3.7.22判決)。
これらの事件からいえることは、自宅待機期間を無給にしていると、その自宅待機を懲戒処分と解され、自宅待機の原因となった労働者の行為に対しては、もう懲戒処分はできない可能性があります。
つまり、懲戒に該当する可能性があるので、自宅謹慎を命じて無給にしていると、調査の結果、懲戒解雇にしようと思っても既に自宅謹慎(無給)が懲戒を行ったことになり、時間がたってから同じ理由で懲戒を行うことはできなくなります。(一事不再理の原則)