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ふるさと納税について

2024年10月23日の日本経済新聞の朝刊に

世田谷区住民税、ふるさと納税で110億円流出 所得2000万円超 寄付額4割

という記事が掲載されました。

東京23区で最も人口が多い世田谷区で、ふるさと納税に伴う2024年度の住民税の流出額が初めて100億円を超え、その寄付額全体のうち4割を所得2000万円超の人々が占めていることが公表されました。

これに対し世田谷区長は、「このまま流出額が累積すると5年後には600億円になる可能性がある。新規事業や校舎改築などインフラへの影響を考えても、上限を設けるなどの対策が必要だ」と話しています。

一般的にふるさと納税で流出した住民税の75%は地方交付税で穴埋めされますが、独自の税収のみで運営可能な東京23区などは地方交付税の不交付団体のため一切補われないことになっており、したがって流出額はそのまま税収減に直結します。仮に世田谷区が交付団体だった場合、流出額は約28億円で済みます。

今回の件で最も重要なポイントは、流出額の大きさももちろんそうですが、控除額の大きい高所得者に寄付額が偏っているという利用の実態にあります。

所得が2000万円を超える人の寄付金を合計すると123億円4500万円。利用者の9%に満たない人の寄付額が全体の4割以上を占めたことになります。所得の高い層ほどふるさと納税の恩恵を多く受けながら、居住する自治体の財政基盤に大きな影響を与えている構造が示されたといえます。

世田谷区は長らく「返礼品競争には加わらない」という立場をとってきましたが、年を追うごとに膨らむ流出額を少しでも抑えようと2022年に方針を転換し、菓子店の人気商品や温泉旅館の宿泊クーポン券など約100点を返礼品に加え、特設サイトも開設しました。その結果、2023年度の区への寄付額は約3億3000万円と2年前に比べ倍増しましたが、流出額との開きはまだまだ大きいという現状にあります。

特別区長会は今月、ふるさと納税について「廃止を含めた抜本的な見直しを行うべきだ」との主張を改めて取りまとめました。流出額の多い都市部の自治体ほど次年度の税収見通しが立てにくくなり、事業費がかさむインフラ更新への影響も懸念されるという指摘もあります。

ふるさと納税は年々利用者が増え、2023年度の全国の寄付額は1兆円を突破しました。廃止は現実的な解とは言い難いですが、都市部であれ地方であれ、少なくとも住民に身近なサービスを提供する基礎自治体の運営を揺るがすような状況は改善する必要があり、持続可能な制度として再構築するべきだといえます。

「様々な地域に寄付ができ、使い道が選べる」「お礼の品がもらえる」「税金還付・控除が受けられる」などなどのメリットがあるふるさと納税。

一見、寄付された自治体と私たち双方に良い影響がもたらされる素晴らしい制度のように見えますが、その裏側には過度な返礼品競争や自治体の税収減によるインフラへの影響など様々な問題が広がっています。

しかし、ふるさと納税は税収向上効果だけでなく自治体のPRにもつながる、関係人口の創出も見込めるといった波及効果も期待されており、また成功している自治体も多数あることを考慮しても一概にふるさと納税制度を廃止することが得策というわけではないと思います。

少子高齢化や人口減少などの様々な社会問題が今後さらに深刻化していく日本でこのふるさと納税をうまく活用していくことはどんどん難しくなっていくと思いますが、私はどうにかうまく活用できればとても素晴らしい制度だと思っているので今後の各自治体の動きに期待したいと思います。

<福万 ひな>