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「年収106万円の壁」の撤廃について

2025年1月16日の朝刊に

年金改革の難路(2)壁は「106万円」→「週20時間」に 厚生年金加入義務ライン 働き控え、消えぬ懸念

という記事が掲載されました。

厚生労働省の年金改革案は、厚生年金への加入を義務付けるパート労働者の対象拡大が目玉の一つです。「年収106万の壁」などの撤廃による、年金制度の充実を歓迎する声と、抜本解決にはならないとの失望の両方の声が上がっています。

現行制度でパート労働者の加入を義務付けるのは、従業員数51人以上の企業で月額賃金が8.8万円(年収換算で106万程度)以上、週20時間以上勤務といった要件を全て満たす場合です。

厚労省の改革案では、数年かけて年収106万円の賃金要件と従業員数51人以上の企業規模要件を無くし、加入対象外になっている労働者にも厚生年金の加入をさせて「年収106万の壁」による働き控えを無くすことで、より多く働く人が増えて人手不足の解消につながるとの狙いがあります。

一方で、人手不足の解消効果に疑問を呈する声もあります。週20時間未満の勤務であれば今後も厚生年金に加入する必要はないため「106万円の壁」が「20時間の壁」に変わるだけで働き控え対策としては不十分ではないかとの声も上がっています。

事業者にとってのデメリットもあります。厚生年金の保険料は給与の18.3%分で、企業と従業員が半分ずつ負担します。中小事業者らでつくる全国商工会連合会では「物価や賃金の上昇分を価格転嫁できない中で経営を圧迫しかねない」と警戒しています。

与党内にパート労働者の加入拡大への異論は多くありません。将来の年金増につながり、効果が不透明とはいえ人手不足解消という目的もあるため、野党からも今のところ目立った反対論は出ていません。

もっとも、夏の参院選が近くなり野党の対決姿勢が強まれば、厚労省案の不十分な点を突く動きが出る可能性はあります。
たとえば専業主婦らが入る第3号被保険者制度の見直しが見送られた点です。会社員らの配偶者であれば保険料を払わなくても基礎年金をもらえる制度で、女性の労働参加が進む中で時代に合わないとの意見が増えていますが、3号制度の加入者は700万人程度いるため、廃止して国民年金へ加入させるなら保険料(24年度は月1.7万円)を払う必要が生じます。

負担増には世論の反発が起きやすいだけに、厚労省は「与野党とも本気で制度の廃止を目指すとは考えにくい」とみています。

<福原 悠汰>