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育児時短終業給付金の意義と今後の展望

9月27日の日本経済新聞の朝刊で、

育児時短「夫婦で取得」有利も 新設給付金、手取り減を抑制

という記事が掲載されました。

2025年4月に開始された「育児時短就業給付金」は、育児のために所定労働時間を短縮し給与が減少した場合、その減少分の一部を補填する制度で、2歳未満の子どもを育てる労働者が対象です。

支給額は、短縮勤務中に支払われた給与の10%を上限とし、給与の減少幅が10%未満であれば給付率が調整されます。

特徴的なのは、夫婦がともに短時間勤務を分担することで、どちらか一方が単独で時短を取るよりも世帯収入の減少を抑えられる点であり、制度上もそのような取得を後押しする設計になっています。

この制度は、従来女性に偏りがちだった時短勤務を「夫婦で共有するもの」とする意識改革の一歩として評価できます。

時短勤務はこれまで、育児とキャリアの両立を目指す女性の負担となりやすく、結果的に昇進や賃金に不利な影響を及ぼすことが少なくありませんでした。

しかし、制度によって収入減を緩和できるだけでなく、夫婦で育児を分担することで、女性だけに偏っていた働き方の制約を分散させることができます。

これは、企業にとっても多様な人材の活用や従業員定着を促進する観点からプラスに働くでしょう。

一方で、実務的には対象となる労働時間の定義や、時短開始時期によって支給の可否が変わる点など、細かい要件への注意が必要です。

支給対象とならないケースを防ぐためにも、事前の制度理解と適切な運用が不可欠です。また、制度自体がまだ始まったばかりであり、今後の利用実績や課題に応じた制度の改善・拡充も期待されます。

子育てと仕事の両立は、多くの家庭にとって現実的かつ継続的な課題です。

その中で、このような制度が経済的・心理的なハードルを下げる役割を果たし、家庭内の役割分担の見直しや職場文化の変化を促す契機となるのであれば、非常に意義のある取り組みといえるでしょう。

<小松 優佳>