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同一労働同一賃金対応について

2021年10月25日の日経新聞の朝刊に

消える正社員の手当、反発で訴訟も~減額補償など課題~

という記事が掲載されました。

2020年10月13日に非正規従業員に賞与や退職金が支払われないことの是非が争われた訴訟の上告審判において、賞与や退職金の不支給は「不合理とは言えない」との判断を示し、原告の主張を退けました。

しかし、待遇格差の内容次第では「不合理とされることがあり得る」と述べています。今回の裁判において、正規社員と非正社員の仕事内容の差が明確化しました。

裁判所は「正規従業員と非正規従業員では仕事内容に明確な違いがあるため、二者間の待遇の差は許容されるべきものでもあるとされています。」と掲載しました。

その裁判結果を受けて、多くの企業が既存の賃金形態・諸手当の仕組みを変えようとしています。

そこで今回は、企業がどのように賃金形態を変更しているのか、どんな手当が非正規労働者に認められるようになったのかをご紹介したいと思います。

【済生会山口総合病院の例】
従来の扶養手当:主たる扶養者の正規職員にのみ支給
金額:3000円~1万3000円、15歳~22歳の子には5000円加算

新たな制度
子ども手当:主たる扶養者の全職員に支給
金額:6000円~1万円
保育手当:子が保育園や幼稚園に通う全職員に支給
金額:0~3歳の子に関し、1万円
※子ども手当と保育手当は併給されない

このように扶養手当が改変されたことで手当の対象が全職員に拡大した一方、従来の扶養手当を受給していた正規職員は給与額が減少することになり、正規職員9名は同意していない就業規則の違法な不利益変更だとして山口地裁に提訴し、削減分の支払いを求めています。

【ピクスタ株式会社の例】
従来の子供手当・結婚手当・出産祝い金:各1万円支給→廃止

新たな制度
誕生月に1万円を贈る制度を新設
対象:正社員・アルバイトの全職員

ピクスタの正社員の手当改廃は子ども手当を受けていた社員の基本給に旧手当相当額を上乗せすることによって支給額を維持しています。

また社事前説明会では手当改廃の目的は賃金削減ではなく、多様なライフスタイルに対応できる手当とすることだと説明をされています。

このように諸手当の改廃によって、対象が正規従業員から非正規従業員に拡大する一方、従来の手当を受けていた正規従業員が不利益を被る可能性があることは否めません。

労使トラブルを回避するために、十分な事前説明と不利益を受ける職員についての理解を得ること及び必要に応じて減額分の補償措置をとることが必要ではないでしょうか。

<山田 航太>