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定年再雇用の賃下げ相場について

2022年2月2日の日経新聞の夕刊に

定年再雇用で賃下げ「相場」はあるか

という記事が掲載されました。

記事の中では定年再雇用後の賃金がどのくらい下がるのか、またどの程度なら減額してもよいか解説をしています。

同一労働同一賃金について最高裁まで争ったハマキョウレックス裁判についての判決から賃金削減の考え方を見てみましょう。

まず、考えの基となるのは、非正規・正規間の処遇で「不合理と認められる相違」を禁じたパート・有期雇用労働法8条です。

この裁判でまず重要なのは賃金削減自体は違法ではないという判断です。

本給や手当を一つ一つに分解し、正社員と非正規社員の(1)職務内容の差(2)配置変更の可能性の差(3)その他の事情の3要素に照らして検討をします。

(1)と(2)が定年前と同じでも、再雇用が長期雇用を前提としない点や、厚生年金の受給が予定される点を(3)その他の事情と認め、減額幅が小さいことも勘案して賃金削減は不合理でないという判断になりました。

ハマキョウレックス事件では基本給などが定年時に比べ2%~12%引き下げられました。

これと比較して、名古屋地裁での名古屋自動車学校裁判では基本給が半額以下に減らされた点で「定年時の基本給の60%を下回る限度で不合理」と判断しています。

また、福岡高裁での九州総菜裁判では、定年時の時給換算1944円だったのが再雇用で時給900円、週3,4日勤務で月手取り75%減の契約を提案された事案に対し慰謝料100万円を認めています。

そして、23年4月施行予定の改正国家公務員法に「定年を段階的に65歳に引き上げ、60歳到達後の俸給は60歳前の100分の70にする」との規定が入ります。

これは民間の給与実態に合わせたものです。

これらのことから今後は3割減がスタンダードになるという見方もあります。

定年再雇用の制度を導入する場合や、現状の制度を見直すという場合はこういった判例なども勘案しながら制度を構築していくべきかもしれません。

〈山本 瑛祐〉