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「人的資本」の情報開示について

2022年5月14日日本経済新聞の朝刊に

スキル、女性登用…「人的資本」の情報開示へ

という記事が掲載されました。

政府は企業に対し、従業員の育成状況や多様性の確保といった人材への投資に関わる19項目の経営情報について公表を要求することを検討しており、金融庁は19項目の一部について、2023年度にも有価証券報告書への記載を義務付ける方針です。

企業が従業員について価値を生み出す「人的資本」と捉えて適切に投資しているか投資家が判断できるようにすることが目的となっています。

人的資本についての19項目の主な開示例は以下の通りです。

人材育成:リーダシップ、従業員育成、採用、人材維持について
・自発的、非自発的離職率
・研究者の確保、定着への状況
・後継者の育成プロセス

多様性:多様性、非差別、育児休業について
・性別、人種、民族の割合
・期間中の差別事例の総件数
・産休・育休の取得率

健康安全:安全、身体的健康、精神的健康等の従業員の労働環境について
・労働災害発生割合
・従業員の欠勤率

労働慣行:児童・強制労働、賃金の公正性、コンプラ等について
・団体交渉協定対象の割合
・基本給と報酬総額の男女比
・福利厚生の種類や対象

以上のように様々な観点から企業の人的資本への投資状況を把握できる項目についての開示が求められるようになりそうです。

以前は従業員について人件費がかかるコストとして認識する傾向がありましたが、デジタル化が進む現代において、従業員が生み出す利益は大きく、人的資本への投資が企業の利益との相関性が認められます。

人的資本への投資は財務諸表では判断が困難ですが、上記の項目について開示されることによって、企業の人的資本への投資状況、職場環境の特色を確認することが可能となります。

岸田文雄首相は所信表明演説において、「人材投資の見える化を図るために、非財務情報の開示を推進が必要である」と述べていますが、人材投資の見える化は投資家だけではなく、人的資本である従業員にとっても、企業の特色、強み、職場環境を数値として認知することができる貴重な情報となります。

人材資本への投資情報の開示はこれからの人材市場にとって大きな影響を与えるものになるのではないかと注視しています。

<山田 航太>