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社会保険適用拡大について

2022年10月31日の日本経済新聞の朝刊に

厚生年金、パート適用拡大へ議論~50人以下企業も対象に~

という記事が掲載されました。

厚生労働省はパートら短時間労働者が厚生年金に入れる要件を緩和する検討に入ります。

2年後に従業員51人以上の企業で働く人に広げることが決定されています、従業員数の要件撤廃も視野にさらなる対象拡大を議論するそうです。

これは年金財政の悪化で、国民年金(基礎年金)は将来の目減りが予想され、国民年金の上乗せ部分である厚生年金を受け取れる人を増やし、老後資金の底上げを狙うのが目的です。

現状のままでは国民年金の受給水準は2046年度 に19年度比で約3割減るとの試算があり、厚労省は具体策の協議を経て24年末までに結論を出し、25年の通常国会に関連する法改正案の提出をめざします。

厚生年金は国民年金に加えて報酬に比例した金額を合わせてもらえ、会社員らが受け取れ 、パートの一部や自営業者らは国民年金しかもらえません。

現在、パートでも厚生年金を受け取るには(1)従業員101人以上の企業に勤務し、(2)週20時間以上働き、(3)月収が8.8万円(年収換算で106 万円)以上で、(4)学生でないといった条件を満たす必要があります。

政府は従業員数の要件撤廃以外の緩和検討として、個人事業所で働く人の厚生年金の対象業種の拡大も模索しています。

10月の社会保障審議会(厚労省の諮問機関)年金部会で従業員5人以上を雇う個人事業所について、飲食や旅館など対象外となっている業種を厚生年金の対象業種に追加すべきだとの意見が出ました。

現在は製造や土木といった16業種のほか、10月に加えた弁護士や弁理士ら「士業」が対象となっています。

これらの見直しが実現すれば、厚生年金の保険料を払う人が増え、短時間労働者らが将来もらえる年金額は増えます。

一方、企業や事業主側の負担は増えます。厚生年金の保険料は健康保険と同じく、労働者本人と事業者が折半するため、労働者1人あたりのコストは高くなります。

国立社会保障・人口問題研究所の推計(中位シナリオ)によると、15年に約7700万人いた現役世代(15~64歳)は40年に約6000万人まで減ります。国内で人手不足は深刻化し、雇用に関連するコスト増が見込まれるなか、人材の獲得競争はさらに激しくなることが予想されます。

年金の改革をめぐっては厚生年金のパート適用拡大のほか、年金の基礎部分となる国民年金の底上げ策も検討事項になっており、厚生年金の財源などで穴埋めして国民年金の給付水準の低下を抑えたり、国民年金の納付期間を現状の40年か45年に延ばしたりする案が出ています。

さらに中長期的には、フリーランスやギグワーカーといった従来の枠組みに収まらない労働者を支えるための新たな仕組みの創設も課題となっています。

政府は少子高齢化が進むなか、社会保障制度の維持に向けて9月に全世代型社会保障構築会議の議論を再開しました。

多様な労働者を厚生年金など社会保険の対象に加える「勤労者皆保険」は今後の主要なテーマとなっています。

海外ではドイツがフリーランスの一部を日本の厚生年金に相当する年金制度の加入対象にしています。

また、芸術家やジャーナリストも含まれます。

このほか、近年急増しているアプリなどを通じて配達業務などを請け負うギグワーカーについても、欧米を中心に社会保険の対象に加えようとする議論が進んでいます。

労働者側からすると手取りが減る負担に注目されがちな適用拡大ですが、将来受け取る年金受給額が増える以外にもメリットはあります。

例えば、病気や怪我で障害状態となった場合は障害厚生年金が受け取れる可能性がありますし、万が一、お亡くなりになった場合は対象となる遺族に遺族厚生年金が支給されます。

また、健康保険からは傷病手当金や出産手当金などが受け取れます。

社会保険加入については、メリット、デメリットの両方を踏まえた上で自分自身の働き方を考えることが大事だと考えます。

<藤下 雅基>