2025年9月12日の日本経済新聞に
時給1000円超時代(下)最低賃金、政治介入強まる 今年度、大臣 が引き上げ要請 データ重視の公労使揺らす
という記事が出ました。
23年間連続で上昇する最低賃金ですが、最低賃金が上がることで行わなければならない事務手続きがあります。その中でも今回は、健康保険法・厚生年金法による随時改定にご注意ください。
2025年度の最低賃金引き上げ率は6.0%と決定され、全国的に賃金水準の底上げが進んでいます。
これは物価上昇や生活費の高騰に対応するための重要な政策であり、労働者の生活の安定に関わるものです。
一方で、企業にとっては賃金コストの増加に加え、社会保険料の負担増、事務負担増という三重の影響が生じる点に留意する必要があります。
最低賃金が上昇すると、従業員の給与額が増加し、それに比例して企業が負担する社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険など)も増加します。
これらの保険料は法定福利費として企業の固定費に直結するため、特に人件費比率の高い中小企業にとっては経営への影響が大きくなります。
さらに、最低賃金の改定は単なる時給の調整にとどまらず、給与体系や人事制度の見直し、就業規則の改定など、随時の制度整備が求められます。これに伴う事務負担や社内調整のコストも無視できません。
しかしながら、こうした負担がある中でも、最低賃金の引き上げに適切に対応することは、企業・社会の持続的成長に不可欠です。
国民の生活の安定は、労働意欲や定着率の向上につながり、結果として企業の生産性や競争力を高める要因となります。
加えて、政府は「骨太の方針」において、国の目安を超える引き上げを実施した都道府県に対し交付金による支援を行う方針を示しており、地方自治体による積極的な賃上げの動きも広がっています。
最低賃金の引き上げは、企業にとって試練であると同時に、社会全体の底上げを図る好機でもあります。
企業としては、短期的な負担だけでなく、長期的な人材確保や地域経済の活性化という視点からも、前向きに対応していくことが求められます。
<武末 江里>