
8月7日の日本経済新聞に
「高齢者の貢献、現役に打撃 医療費3割負担なら公費ゼロ」という記事が掲載されました。
本記事では、働く高齢者の増加が本来は現役世代の医療保険料負担を軽減するはずであるにもかかわらず、制度の仕組みによって逆に負担を押し上げている現状を説明しています。
75歳以上が加入する後期高齢者医療制度では、医療費の自己負担は原則1割だが、現役並みの所得がある人は3割負担となります。
しかし、この3割負担者の医療給付費には国や自治体の公費は投入されず、現役世代からの保険料による「仕送り」で賄われています。
そのため、働く高齢者が増えて3割負担者が増加すると、現役世代の保険料負担も増えてしまうという矛盾が生じているのが現状です。
2025年度には3割負担者が約165万人となり、前年度比8.8%増加した結果、現役世代からの仕送りは約400億円増えています。
政府や与野党は高齢者の窓口負担や公費負担のあり方を見直す議論を進めており、制度全体の改革が求められています。
後期高齢者医療制度は75歳以上を対象とする医療保険制度で、給付費は本人の保険料約1割、現役世代からの支援金約4割、公費約5割で構成されています。
しかし、現役並み所得者(単身年収383万円以上、夫婦520万円以上)は3割負担となり、その給付費には公費が投入されません。
これは2002年に政府が導入した後期高齢者医療制度の前身である老人保健制度へ2割負担が導入された際の考えが引き継がれているためです。

近年は健康寿命の延伸や高齢者の賃金上昇により、働く高齢者が増加しています。
高齢者が健康で働き続けることは社会全体にとって望ましいことであり、本来であれば医療制度の支え手が増えることにつながるはずです。
しかし、制度設計が過去の前提のままであるため、その効果が十分に生かされていません。
現役世代は賃金の伸び悩みや少子化の影響で負担が重くなっており、保険料がさらに増えれば将来への不安も大きくなる一方で、高齢者にも生活状況には大きな差があるため、一律に負担を増やすことには慎重さが必要です。
医療制度を持続可能にするためには、世代間の対立ではなく、「社会全体で支えあえる財源配分」を実現する改革が必要なのではないでしょうか。
<右田 茉依>