
子の不登校で介護休業、保護者6割「制度知らない」 啓発へ官民動く
― 子どもの不登校と仕事の両立を考える ―
「介護休業※」と聞くと、親の介護を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
しかし、介護休業の対象となる「家族」には、子どもも含まれます。
実は、子どもが不登校の状態にあり、その状態が育児・介護休業法上の「常時介護を必要とする状態」に該当する場合には、保護者が介護休業や介護休暇等を利用できる場合があります。
しかし、これは「不登校であれば誰でも介護休業を取得できる」という意味ではありません。
「常時介護を必要とする状態」に該当するかどうかは、厚生労働省が定める判断基準に照らして、個々の状況に応じて判断されます。
それでも、この制度の存在自体を知らなければ、「仕事を辞めるしかない」「有給休暇を使い続けるしかない」と、別の選択肢を検討することさえできません。
実際、2026年に行われた調査では、働く親の63.3%が「不登校対応に介護休業が使える場合があることを知らなかった」と回答。「聞いたことはあるが詳しく知らなかった」という回答も17.0%あり、合わせて80.3%が正確には知らなかったという結果でした。
さらに、人事担当者においても70.4%がこの制度について正確に理解していなかったとされています。
一方で、2024年度の小・中学校における不登校児童生徒数は35万3,970人と、過去最多となっています。不登校は、決して一部の家庭だけの問題ではありません。
そして、子どもの不登校に直面した保護者が抱える負担は、「学校に行けない子どもへの対応」だけではありません。
学校との連絡、医療機関や相談機関とのやり取り、家庭での見守り、生活リズムへの対応――。
その一つひとつに時間や心の余裕が必要になります。
だからこそ、仕事を続けながら子どもを支えるための選択肢を知っておくことには、大きな意味があります。
―「制度がある」だけでは、十分ではない―
2025年4月から、介護離職を防ぐため、企業には介護休業や介護両立支援制度等を利用しやすくするための雇用環境整備に加え、介護に直面した労働者への個別の制度周知・意向確認の措置、40歳等の労働者への早期の情報提供が義務付けられました。
つまり、企業に求められているのは、就業規則に制度を書いておくことだけではありません。
「必要になったときに、その人が制度を知り、利用を検討できる状態にしておくこと」も、重要な役割になっています。
もちろん、すべての不登校が介護休業の対象になるわけではありません。だからこそ、本人や家族が「これは対象にならないだろう」と自己判断するのではなく、会社の人事・総務担当者などにも相談してみてはいかがでしょうか。
企業側も、「相談されたら説明する」という受け身の対応だけではなく、制度を必要とする可能性のある人が、安心して相談できる環境をつくることが求められるのではないでしょうか。
制度は、「あること」だけでは人を支えられません。
知ってもらい、相談してもらい、必要な人が利用できて初めて、制度はその役割を果たします。
「知らなかったから、仕事を辞めるしかなかった。」そんな選択を一つでも減らすために。
私たち社労士も、制度そのものだけではなく、制度を必要とする「人」に届く情報発信を大切にしていきたいと思います。
<鴻矢 智美>