
介護業界では、人手不足が深刻化するなか、短時間・単発で働く「スポットワーク」の活用が広がっています。
介護にスポットワーク、タイミー募集6割増 特定技能は2万人拡大案
必要なときに人材を確保できることは、事業者にとって大きな助けになります。なかでも注目したいのは、資格がなくても担える業務を切り分け、専門職が本来の業務に集中できる環境づくりを進めている点です。
人手不足への対応は、単に人を増やすことだけではありません。今ある仕事を見直し、限られた人員でどのように業務を支えていくかを考えることも大切です。
人手が足りないと、一人ひとりが多くの業務を抱え、目の前の仕事をこなすことに精いっぱいになりがちです。その結果、本来、知識や経験を活かすべき仕事に、十分な時間を割けなくなることもあります。
しかし、業務を見直してみると、すべての仕事に同じ知識や経験が必要とは限りません。
専門性が求められる仕事と、ほかの人に任せられる仕事を整理することで、それぞれが自分の役割に力を発揮しやすくなります。
これは介護業界に限った話ではありません。一般企業でも、業務の分担を見直すことで、特定の人に仕事が集中することを防ぎ、従業員それぞれの強みを活かせる可能性があります。
大切なのは、単に仕事を分けることではなく、一人ひとりの知識や経験、能力を踏まえ、それぞれが力を発揮できる仕組みをつくることです。
一方で、仕事を切り分ければ、それだけで問題が解決するわけではありません。
介護の現場では、利用者の小さな変化に気づくことや、不安を抱える人に声をかけることなど、経験や知識、人との関わりが欠かせない仕事もあります。
スポットワークを活用する場合も、任せる業務の範囲を明確にし、必要な説明や教育を行うことが重要です。
また、業務の効率化を進める際には、現場で働く人の声に耳を傾けることも必要です。新しい仕組みを導入したことで、かえって誰かの負担が増えていないか。特定の人に仕事が集中していないか。
効率化だけを優先するのではなく、働く人が安心して仕事に取り組める環境になっているかを考えることが大切です。
それぞれの役割を尊重し、持っている力を活かせる環境を整えることにつながります。
人手不足への対応というと、どうしても「どうすれば人を確保できるか」ということに目が向きがちです。もちろん、採用によって人材を確保することは欠かせません。
それと同時に、今いる人の力を十分に活かせているかを考えることも必要ではないでしょうか。
人手不足を、ただ人が足りないという問題として捉えるのではなく、仕事のあり方や役割分担を見直し、組織全体で人を支える仕組みをつくる機会にする。
効率化の先にいる「人」を見失わず、一人ひとりが力を発揮できる組織をつるくこと。
それが、人手不足の時代に求められる取り組みの一つではないでしょうか。
<鴻矢 智美>